11/23 宮城県高校サッカー新人大会 決勝戦 (七ヶ浜サッカー場)

東北高校 1−2 聖和学園高校

力強く踏みしめた"夢"への新たなる一歩!聖和学園がライバル東北を下し、県新人王者に輝く!


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延長・PK戦まで縺れ込んだ高校選手権・宮城県大会の決勝の激闘から早2週間と3日。

その歴史に残る激戦の余韻も冷めやらぬ中、早くも来季の全国の舞台を目指す高校チームの多くは次々と2年生を中心とした新チームが新たな船出を切る中、選手権予選の翌週の11/14から早くも1回戦が始まった県高校サッカー新人大会も、ここまで準決勝までを終えて迎えた決勝戦。

つい数日前に前代の県内王者が決したばかりのこの時期には少し気が早いが、1年後の展望を占う新世代での初の県内頂上決戦となったこの決勝。

その舞台へと姿を現したのは、先日の選手権予選では自慢の堅守をベースとした切り替えの速い攻守を武器に、優勝候補として挙げられた前評判そのままに決勝へと駒を進め、その決勝では宮城県工業を相手に歴史に残る大激闘の末にPK戦を制し、国立への道を拓いた東北高校。
対するのは、県内最強との呼び声も高い変幻自在なオフェンスサッカーで初の全国進出を狙って先日の選手権予選を戦うが、迎えた準決勝ではこの日対する東北を相手に1−2と惜敗し、あと一歩のところで夢を掴めず、新たに2年生を中心に”来年こそは”とさらに進化を遂げた攻撃サッカーで県内王座への道を歩むことを誓う聖和学園高校。

東北は年末年始に全国選手権を控える中、2年生以下の選手の全国へ向けた戦力の底上げの意味合いが強い今大会なのに対し、既に3年生がチームを去って新チームが発足し、2010年への全国への飛躍を目指す中での手始めとしての新人戦制覇、そして東北のリベンジに燃える聖和という対照的な状況の中で迎えたこの一戦。


初戦では格下の白石高校を相手に薄氷のPK勝ちという堅い出だしを切る中、続く育英、学院との県内強豪との対戦を接戦の末に乗り切り、準決勝では選手権予選で死闘を繰り広げた県工を相手に再びPK戦での勝利で接戦を物にし、苦しい試合を勝ち抜いてファイナルに進んだ東北。

その東北の布陣にはお馴染みの変則的なバックラインを構成する変則的な4-5-1のシステムの中、GKには選手権予選ではチームを全国に導く脅威のPKストップを見せた@荒川選手が入り、最終ラインにはリベロの位置には選手権予選では主にストッパーとしてレギュラーに入ったD阿部選手が入り、2人のストッパーにはA中条選手と、1年生のC佐々木選手の”部活出身コンビ”が入り、フォアリベロ的ポジションにはB田村選手が入る4人の最終ライン。

そして中盤にはウイングバックの左にはこの日の会場となる地元七ヶ浜出身のO佐藤誠選手と、右にはベガルタJY出身のG我妻選手が入り、CHには同じくベガルタ出身のN野村選手。

攻撃を司る3人の前線には、CFの位置に新たに背番号10を引き継ぐI李選手の1トップに、シャドーには来月に全国の舞台を戦うAチームでもエースクラスとして活躍する(暫定)新キャプテンのF千葉選手と、同じくAチームでも主力で、先日の選手権予選の聖和戦では右WBとして決勝ゴールを叩き込んだQ小林選手が入る11人。

対する聖和学園は先日の選手権予選敗退のショックを新たな跳躍のバネとして再始動する中、迎えた今大会では初戦での涌谷高校戦では7−0とロケットスタートを切り、続く志津川戦は5−0、泉館山戦は3−0、そして利府高校との準決勝では3−0と、ここまで4戦で18得点0失点と、まさに"格の違い"を見せて相手を圧倒する形で決勝までの道を駆け上がり、東北への雪辱の機会を得た聖和。

その聖和は表現上は4−5−1となるが、CFの後方にトップ下とウイングを配置し、前線に4人が攻撃に専念する新たな攻撃的布陣。

そのシステムの中でGKにはベガルタJY出身の@坂本選手が入り、最終ラインには今季は前代のチームでもその激しい当たりのディフェンスで不動の地位を築いたD赤坂選手と、選手権予選では1年生で唯一メンバー登録された期待株のE池田選手がCBを組み、SBには左にD早坂選手と、右にL石川選手。

中盤には2人のボランチの位置にF関選手とM本郷選手が組み、表現の仕方によっては”4トップ”とも表現できる余地がある前線には、ウイング的位置に選手権予選ではスーパーサブとして活躍したスピード豊富な突破が売りのH斉藤選手が右に入り、左には今大会はチームキャプテンとして臨むG有光選手、トップ下の位置にはFCみやぎ出身で、中学時代には現在は仙台ユースで活躍するMF安食選手、FW武者選手と活躍したJ渡邊選手。

そしてCFには今年は2年生ながらプリンスリーグ東北で得点王を獲得するなど、県内屈指のストライカーとして大きく台頭するも、自身としては無得点に終わった選手権予選での悔し涙を乗り越え、再び全国を狙うチームの先導役としてさらなる進化を狙うエースのI門田選手が入る11人で臨む。
聖和学園高校の布陣は以下の通り。

【聖和学園高校】4−5−1(4-2-3-1)
------------------10門田----------------------
----------------------------------------------
------------------11渡邊----------------------
-----8有光--------------------------9斉藤-----
----------------------------------------------
--------------7関--------14本郷---------------
----------------------------------------------
----------------------------------------------
-3早坂---------------------------------13石川-
-------------5赤坂--------6池田---------------
----------------------------------------------
------------------1坂本-----------------------

東北高校の布陣は以下の通り。

【東北高校】4-5-1(3-1-3-2-1)
-------------------10李-----------------------
----------------------------------------------
------------7千葉---------18小林--------------
----------------------------------------------
------------------15野村----------------------
-16佐藤誠-------------------------------8我妻-
----------------------------------------------
-------------------3田村----------------------
----------------------------------------------
--------4佐々木----------------2中条----------
-------------------5阿部----------------------
----------------------------------------------
-------------------1荒川----------------------


そして35分ハーフの短期決戦で迎えた前半戦。

その前半の立ち上がりは世代は変われど、自慢の堅守をベースとしたボールカットから一気に相手陣内へ速攻を仕掛ける形で好機を狙う東北と、主体的なボールキープを図り、ショートパスとドリブルを組み合わせた打開から突破口を開く聖和という、先日の選手権でも見せた両者のスタイルが早くも火花を散らす形で試合は進む。

ほぼ互角に好機を探り合う出だしの中、最初に東北がシュートチャンスを作り出したのは5分。

エースのF千葉選手が左サイドから中央にドリブルで切れ込み、右足で豪快にミドルを放ってオープニングシュートとするが、これはポストの右に外れる。

続いて10分には左サイドでボールを持ったQ小林選手のスルーパスにN野村選手が左PAに抜け出し、GKと1対1の決定機で左足でシュートを放つが、これも僅かに右に外れて得点ならず。

ここまで前半戦の3分の1の時間を終え、切り替えの素早い攻守から数本の好機を作り出して得点の形を探る東北に対し、ボールを持つ時間は優勢ながら、聖和は東北のD阿部選手らを中心とした堅い守備陣を崩し切れず、シュートまで持ち込むことが出来ない時間が続く。

その中で14分にはエースのI門田選手が右サイドに突破を図ったL石川選手のパスを受け、強引な中央突破から右足でシュートを狙いに行くが、これは相手DFの身体を張ったブロックに阻まれてしまう。
聖和はI門田選手のポストプレーや、H斉藤選手、J渡邊選手のスペースへの突破などで徐々に”聖和サッカー”の片鱗を見せ始めるが、ここまで思惑通りのゲームプランで試合を進めるのは依然として東北。

人数を掛けてのプレスから高い位置でボールを奪い、F千葉選手、Q小林選手らを起点とした速攻から効果的な形を作っていく。

その中、26分には東北が左ゴール前の好位置で得たFKからQ小林選手が強烈に右足でシュートを狙うが、これは僅かに右に外れてしまう。

前半も終盤に差し掛かり、ここまでほぼ試合の主導権を掴んで要領よく攻守を組み立てていく東北に対し、ボールを持つ時間は東北を上回るも、相手の固い守備陣のマークに苦しみ、なかなかシュートの形を作り出すことが出来ない聖和だが、その聖和も辛抱強くフィニッシュまでの形を探って攻勢を仕掛けると、ここで久々に聖和が好機を作り出したのは28分。

敵陣のゴール前中央でI門田選手がボールを受けると、そのまま相手DFのマークを巧みなターンでかわして右足でシュートを放つが、これはクロスバーの上。
続いて32分には、M本郷選手が左サイドから中央に突破を図って右足で思い切りよくミドルシュートを叩き込むが、これは東北のGK@荒川選手が好セーブで防ぐ。

得点ならずもここで立て続けに2本の好機を作り出し、後半へと勢いを繋ぎたい聖和だが、一転聖和の反撃を受ける形となった東北も最後に大きなチャンスを作り出したのは前半ロスタイム。

自陣からGKの@荒川選手が前線に大きくボールを蹴り出すと、このボールにI李選手が一気に敵陣の左PAに抜け出し、左足を豪快に叩き込むシュート。

このシュートは鋭い軌道を描いてゴールへと向かうが、僅かに精度に欠いたボールはクロスバーをかすって左上に逸れ、最後の決定機は得点とならず、そのまま35分の笛。

要所での精度の高い攻守の切り替えからプラン通りの試合の組み立てを見せる東北に対し、序盤はその東北の堅守に苦しむも、時間の経過に連れて本来の”聖和サッカー”の片鱗を垣間見せる聖和が激しく攻守を入れ替える攻防を見せたが、共に最後のフィニッシュの精度に欠く形で0−0のスコアレスで前半戦を折り返した。






両者共に目指すサッカーのスタイルの片鱗を垣間見せるも、得点動かず0−0で迎えた後半戦。

その後半は、前半戦は立ち上がりに劣勢を強いられる形となった聖和だったが、勢いを増してきた前半の中盤以降に得た勢いを引き継ぐ形で、聖和が後半のスタートからアグレッシブな攻勢に出る。

その聖和がまず形を作ったのは2分。

H斉藤選手が左サイドへドリブル突破を図って左足で低くクロスを折り返し、このボールにニアへ飛び込んだI門田選手が右足アウトサイドでダイレクトシュートを叩き込むが、これは僅かにポストの左。

続いて8分には右サイドからドリブルで中央突破を図ったG有光選手が左足で豪快にミドルを叩き込むが、これはGKのセーブに阻まれる。

後半に入っては前半とは一転して聖和の猛攻の前に劣勢を強いられる形となっている東北だが、この状況を打開するべく前半と同様にボールを奪ってからの素早い攻撃への繋ぎからF千葉選手らが敵陣のスペースを狙って速攻を仕掛けるが、対する聖和もD赤坂選手らがしっかり身体を入れて東北に主導権を掴ませない。

後半は一気に勢いを高めて攻守に躍動感が増す聖和が1点を狙う展開の中、その後も10分にG有光選手の中央突破からのミドルシュート、J渡邊選手のスペースへの突破などで形を作り出すと、ついにここで最初に試合が動いたのは15分。

聖和のL石川選手が右サイドへ突破を図ってクロスを上げ、左PAでこのボールに反応したJ渡邊が左足でシュート。

このシュートは一度は相手DFにブロックされるが、再び左PAにこぼれたボールに反応したH斉藤選手が右足でシュートを押し込むと、これが決まって1−0。

聖和が立ち上がりからの攻勢の流れの中から、ついに待望の先制点を奪う。
前半はほぼ思惑通りのゲームプランを履行し、流れを掴むも、後半は一転して聖和の流れに飲まれてビハインドを背負う格好となった東北。

1点を追う展開となる中、ベンチはすぐに動きを見せると、16分にはO佐藤誠、C佐々木選手に代えてS鈴木選手とH青山選手を投入。

さらに5分置いて21分にはB田村選手に代えてJ鹿郷選手を投入するなど、連続のメンバーチェンジで流れを引き戻しを図る。

しかし、先制点を奪ったことでさらに勢いを増した聖和のペースは動かず、次々と策を練る東北の裏目を突く形で、聖和が再び試合を動かしたのは25分。

M本郷選手が右からのFKから大きくクロスを蹴り込むと、左PAの位置でフリーで反応したE池田選手が右足を豪快に叩き込むボレーシュート。

これは東北のGK荒川選手が見事な反応で防いだが、このボールがPA内にこぼれたところに反応したI門田選手が頭で競ったところ、再びエリア内にボールが落ちたところに飛び込んだH斉藤選手が頭で押し込むシュート。

GKを超えたボールに東北のD阿部選手が間一髪クリアを試みるが、このボールはクリアの前にラインを割っていたと判定され、ゴールネットこそ揺れずも、聖和が貴重な2点目を奪い、2−0とさらにリードを広げる。

2点を先制した選手権予選とは逆の展開となり、徐々に焦りが募り始める東北イレブン。

その東北は数分前に投入されたJ鹿郷選手を下げ、E長沢選手を投入するほか、ここまでセカンドトップの位置に入っていたF千葉選手を完全なFWの位置にポジションを上げるなど策を見せる中、早い時間に1点を返して可能性を繋ぎたい東北が、ようやくここで反撃の一打を叩き込んだのは30分。

東北が相手陣内のPAで混戦に持ち込む中、相手DFとの競り合いから右PAでボールがこぼれると、すかさずこのボールに反応したE長沢選手が右足を豪快に叩き込むダイレクトボレー。

これがそのまま強烈な軌跡を描いてゴール左隅に突き刺さり、これが決まって1−2。

東北のE長沢選手が途中投入の期待に応える形で1点を奪い、東北が1点差に追いつく。

次の1点が大きく試合の行方を左右する後半戦も、残すのはラスト5分。

これまでも激しい身体の辺りを見せた競り合いもさらに激しさを増す中、両者が互角にボールを奪い合う展開。

その中、ここで1点を加えて試合を決めたい聖和は、34分にE池田選手のパスを受けたH斉藤選手がハットトリックを狙って左PAに突破し、左足でそのままシュートを叩き込むが、これはクロスバーの上。

対する東北もロスタイムにF千葉選手が自慢の快速で右PAに突破を図って右足でシュートを試みるが、聖和の身体を張ったブロックにも阻まれ、その後2分のロスタイムの間にも得点は動かず、そのまま試合終了の笛。
3年生メンバーを中心とした前代チームが魂をぶつけ合った選手権予選の激闘から僅かに20日を空け、新チームに生まれ変わった両雄が再び合間見えた一戦。

その両者の”再戦”は、選手権であと一歩夢をつかめず、流した先輩達の涙を力に、来季の躍進を誓う聖和学園が、力強くライバルの東北を相手に雪辱を果たす結果となった。

選手権予選では悔し涙を流したが、「自分達の目指すサッカーは間違っていない」ということを証明し、今大会での優勝という目標を達成した聖和だが、この優勝は終わりではなく、単なる1つの始まりに過ぎない。
さらなる高みと、前代のチームが成し遂げられなかった「全国」への道を目指し、聖和学園は今大会で得た自信を糧に、再び茨の道を力強く歩み始める。

この試合に敗れた東北も、続く全国選手権、さらに再び県王者の座を懸けて争う来季の戦いに向けて、さらに危機感を強めて次は負けじと鍛錬に励んでくることだろう。

まだ年末年始の全国選手権も開幕を迎えていない中で、少し気が早い話ではあるが、既に来季の高校サッカーの主役の座を狙う戦いは始まっている。

これから再び季節を重ねる中で何度も覇を争って合間見えるであろう両チームの、さらなる健闘に期待をしたいところだ。


[得点]
50分:斉藤 恵太(聖和学園高校)
59分:斉藤 恵太(聖和学園高校)
74分:長沢 孝宏 (東北高校)



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